派遣切り、本当に悪いのは誰?


久々に読んでいて読み応えのあるコラムを見つけた。
NBonlineに掲載されている小田嶋 隆氏の「ハケン切り」の品格だ。

毎日のように急激な景気悪化が伝えられ、派遣社員等の解雇や新卒者の内定取り消し等々雇用の悪化がニュースとなっている。
そんな中、派遣社員の契約打ち切り、いわゆる派遣切りの報道に私自身大いに疑問を抱いていた。

以前働いていた会社では多くの派遣社員が働いていた。
なぜ派遣社員を雇っていたかというと2つの面があった。
一つは専門技術を持っている人材の確保である。専門技術を持っている人材はなかなか見つけにくいが、派遣会社によっては得意分野を持っている会社もあっていい人材を確保しやすかったという面がある。

もう一つは雇用調整のし易さという面である。
季節によって忙しい時期と暇な時期というのがある。忙しい時期は多くの人手が欲しいし暇な時期はコストを抑えるためにも人員は抑えたい。
営業事務やロジスティックなど人手に頼る仕事では、暇な時期は殆どが正社員だけで仕事をし、繁忙期には派遣社員を入れて乗り切るという使い方だ。
まさに雇用調整のために派遣社員を使っていた。

また、企業にとって派遣社員は決して安い人員ではない。
どちらかというと正社員を雇うより高コストな人員のはずだ。
なんせ人材派遣会社に支払う費用は、働いている本人の給与の他に、派遣会社の営業マンや総務・経理等々の間接業務に携わる人達の給与・ボーナス、そして派遣会社の利益までと多くのコストが含まれている。
単純に考えれば、長期的に雇用するなら正社員にする方が安上がりなのだ。
それでも派遣社員として受け入れるのは、必要な時に必要なだけ人手が欲しいからであり、人手がいらなくなれば契約を更新をしなければいいという雇用調整のし易さからだ。
だから、企業にとって派遣切りは不景気になって人手が余ってきたから契約を更新しないという至極当然の判断であり、非難されるべきは受け入れ企業の判断というより営業努力が足りない派遣会社の方ではないだろうか。

しかし、どういう訳か派遣会社を悪者扱いする論調が皆無だ。
派遣会社は登録されている人材を企業に売り込み仕事を取ってくるのが仕事。
契約を切られないようにしたり、次の仕事を見つけてくるなど派遣会社がすべき努力は沢山あるのに、誰もこの点について突っ込んでいない。
不思議でしょうがない。
どちらかというと栄華を極め沢山の広告を出す派遣会社に嫌われるのが嫌で、メディアは触れていないだけなんじゃないかと邪推してしまう。

また、派遣社員という不安定な雇用形態を拡大させていたのは小泉政権下で行われていった規制緩和で、かつては一部の職種でしか認められていなかった派遣労働をあらゆる分野で可能にし、派遣社員という雇用形態を拡大させていったのだ。
その小泉政権を高い支持率で支えていたのは我々であったはずだ。(私は嫌いだったが)

今、企業に対して雇用促進を求めていっても無駄であろう。
物が売れなくなり仕事が無くなっている会社が余剰人員を抱えたままでいれば、いずれ会社は倒産してしまう。今、一部人員を減らすことで残りの人達の雇用が確保し続けられるのなら、全員が職を失うより遙かにいい判断だろう。

突然襲ってきた大不況の波を乗り切り、好景気に沸くことになるのはいつの日なのだろうか...

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